国会活動報告 参議院環境委員会 愛知県視察

2005年1月13日-14日

   委員派遣報告

 去る一月十三日及び十四日の二日間、愛知県における環境保全及び公害対策等に関する実情調査のため、郡司委員長、S鍋理事、谷理事、狩野委員、大石委員、芝委員、島田委員、林委員、福山委員、高野委員、鰐淵委員及び私、大野の十二名で調査を行ってまいりました。
 今回の調査は、愛知県の環境行政及び愛知万博への取組並びに環境省中部地区環境対策調査官事務所の業務について説明を聴取した後、ラムサール条約登録湿地となっている藤前干潟、環境に配慮した空港を目指している中部国際空港、「自然の叡智」を開催テーマとしている愛知万博、燃料電池自動車の開発を進めているトヨタ自動車株式会社の本社工場を視察いたしました。
まず、愛知県では、愛知万博の開催、中部国際空港の開港という二大事業の効果を生かした地域づくりの大きな柱の一つとして「環境先進県づくり」を掲げ、諸施策を推進しておりました。説明では、地球温暖化対策については、本年一月に「あいち地球温暖化防止戦略」を策定したほか、温暖化の一因である自動車については、平成十四年十月策定の「あいち新世紀自動車環境戦略」により総合的な施策の展開を行ってきているとのことでした。循環型社会の形成については、モノづくりで発展してきた本県が廃棄物の減量化・資源化に果たすべき役割が大きいことから、先導的リサイクル施設を核とした「エコタウン」の形成や県が独自に認証する建設リサイクル資材「あいくる」などの取組を進めてきているとのことでした。環境学習の取組については、瀬戸市の「海上の森」を保全し、環境学習や里山保全活動の場として活用するほか、愛知万博のテーマである「自然の叡智」の理念を末永く引き継いでいくため、愛知万博を記念した森づくりなどの活動などに取り組んできており、本年一月には「愛知県環境学習基本方針」を策定公表しているとのことでした。
愛知万博への取組については、地元として会場の土地提供、会場への交通アクセスの確保などを図るとともに、長久手愛知県館、瀬戸愛知県館などを出展することとしております。出展においては、起伏のある土地を大幅に改変せず、自然や地形と親和性のある建物とし、博覧会終了後は「里山学びと交流の森」の拠点施設に整備するほか、両館の電力を自然エネルギーで賄うなどの環境への配慮を行っております。
 委員からは、県庁公用車の低公害化の現状と今後の見通し、岐阜県多治見市にある名古屋市愛岐処分場の問題、オオタカ営巣の現状と今後の対応などの質疑が行われました。
 環境省の中部地区環境対策調査官事務所は、福井県、岐阜県、静岡県、愛知県及び三重県を対象として環境情報の収集・調査及び相談、廃棄物・リサイクル対策、環境教育・環境保全活動及び地球温暖化対策を行っており、十一名の職員で構成されております。近年、大規模な廃棄物不法投棄事案が相次いでおりますが、説明では、特に、岐阜市椿洞産業廃棄物不法投棄事案、敦賀市民間廃棄物最終処分場無許可増設事案など五件を重点監視事項として、適時、情報収集を行い、その結果を本省に報告しているとのことでした。なお、環境省からは、これら地方環境対策調査官事務所と自然保護事務所を統合整理し、地方支分部局である地方環境事務所を設置するため、環境省設置法の改正案を準備中であるとの説明もありました。
 次に、平成十四年十一月に我が国で十二番目のラムサール条約登録湿地となった藤前干潟を視察いたしました。藤前干潟は、名古屋港に流入する庄内川、新川、日光川の河口に広がる干潟で、シギ・チドリ類などの日本最大級の渡り鳥の中継生息地となっております。かつて名古屋市が廃棄物処分場用地として埋め立てる計画がありましたが、環境庁の厳しい意見などもあって、結局計画は断念され干潟として保全されることになりました。また、説明では、国指定鳥獣保護区七百七十ヘクタールのうち三百二十三ヘクタールが特別保護地区に指定され、シギ・チドリ類七十三種のうち四十一種が確認されているとのことでした。なお、環境学習や保全調査の拠点となる活動施設を、愛知万博に間に合うよう干潟に隣接する藤前地区及び稲永公園地区の二箇所に整備を進めておりました。このように、藤前干潟は、自然環境の保全上重要なだけでなく、人間と自然が共生して循環型社会へ向かう転換となった好例として大きな意味を持っております。
 次に、開港を目前に控え、建設を進めている中部国際空港を視察いたしました。同空港は、二十四時間利用が可能な空港として、国際線・国内線の機能を併せ持つ拠点空港の役割を担うもので、愛知県常滑市沖に三千五百メートルの滑走路一本を有し、七千六百八十億円の事業費を掛け建設されています。建設に当たっては、空港建設の基本構想から計画、建設、開港後の段階に至るまで環境への配慮を考えた取組を行っており、日本の空港設置管理者として初めて環境マネジメントシステムの国際規格ISO一四〇〇一を取得しております。具体的取組として、滑走路の位置、飛行経路の工夫による航空機騒音への配慮、海水の流れに配慮した空港島の位置及びかたち、空港島護岸に海の生物が集まるような工夫、コージェネレーションシステムの導入・太陽光発電システムの導入・光触媒ガラスの採用など空港施設における環境配慮、天然ガス自動車の導入とエコスタンドの設置などを挙げておりました。
 委員からは、開港後の航空機騒音対策、海域生物の生息環境の変化と監視の継続、生態系への環境影響などの質疑が行われました。その後、環境に配慮した空港施設を見て回りました。
 次に、本年三月二十五日からの開催を目指し、建設を進めている愛知万博の長久手会場を視察いたしました。愛知万博は、二十一世紀の人類が直面する地球的課題の解決の方向性と人類の生き方を発信するため、「自然の叡智」をテーマとして新しい文化・文明の創造を目指して開催するものであります。万博会場は、長久手会場と瀬戸会場の合わせて百七十三ヘクタールの丘陵地帯にあり、大阪万博に比較して四分の一の広さになっております。これは海上の森など会場周辺にあるオオタカの営巣を守ることなどによるものであります。愛知万博では、会場づくりや会場運営、観客輸送などにおいて環境影響評価の実施を始め、自然地形・素材の活用、リデュース、リユース、リサイクルの三Rを目指した建設・運営、環境について楽しみながら学ぶ自然体感プログラムの展開など環境問題に正面から取り組んでおります。特に、循環型社会への取組として、太陽光発電システム、燃料電池システム、メタン発酵システム、高温ガス化システムを組み合わせ、安定した電力を長久手会場日本館に供給することにしております。また、会場までのアクセスとして日本初の実用化リニアモータカー、会場内の移動には無人自動運転・隊列走行が体験できる新交通システム、会場間の移動には燃料電池ハイブリットバスなど環境にやさしく、安全で快適な二十一世紀型交通システムが運転されることになっておりました。
 委員からは、駐車場へのハイブリット自動車など低公害車の優先、オオタカ営巣調査の継続、万博終了後の会場跡地対策、万博による利益金の環境対策への使用、全国規模の万博PRの推進などの質疑が行われました。その後、新エネルギーシステム、会場をほぼ水平に一周できる空中の回廊「グローバル・ループ」などを見て回りましたが、万博終了後はできるだけ元の自然に戻すことを期待しているところです。
 次に、トヨタ自動車株式会社の本社工場において低公害車である燃料電池自動車の開発状況について視察いたしました。同社は、我が国最大の企業で、自動車生産では世界第二位のメーカーであり、また、環境面では「トヨタ地球環境憲章」を制定し、車の生産、物流、使用、廃棄・リサイクルの各段階で環境負荷物質の低減に取り組んできております。究極のエコカーとして注目される燃料電池自動車については、平成四年に開発に着手し、平成十四年十二月に燃料電池ハイブリット車「トヨタFCHV」を日本と米国で限定リース販売を開始いたしております。説明では、今後の課題として、燃料電池の低温時始動性能の向上、航続距離の確保、現在一台一億円といわれる生産コストの低減、燃料の水素を供給するスタンドの普及などの問題が挙げられており、本格普及は早くても二〇二〇年頃と予想されるとのことでした。
 委員からは、燃料電池自動車の位置づけ、ハイブリット自動車の収支率、中国・インドなど途上国への技術協力、今後のハイブリット自動車の普及見通し、ソーラーカーの実現見通しなどの質疑が行われました。その後、展示されている燃料電池自動車の内部と水素ステーションを視察しましたが、本格的な市場導入には、技術開発だけでなく社会基盤整備など解決すべき課題が数多く残されていることから、かなりの歳月が必要であると痛感したところであります。
最後に、今回の派遣に際し、お世話になった関係者の方々に厚く御礼を申し上げ、報告を終わります。

 



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