谷博之国会活動


ミャンマー国バルーチャン第二水力発電所補修計画における環境・社会面の影響に関する質問主意書(第154国会質問主意書第51号) 2002年7月30日 谷博之

参議院議員谷博之君提出 ミャンマー国バルーチャン第二水力発電所補修計画における環境・社会面の影響に関する質問に対する答弁書 2002年8月27日 内閣総理大臣 小泉純一郎

 本年五月十日、日本政府はミャンマー政府と交換公文を交わし、同国カヤー州にあるバルーチャン第二水力発電所の補修計画のために、六億二千八百万円の無償資金供与を実施することになった。これは五月六日、自宅軟禁状態にあったアウン・サン・スー・チー氏が解放されたことを、ミャンマー政府が民主化に向けて大きな一歩を踏み出したものと日本政府は評価し、同国の民主化と国造りに向けた努力を支援する観点から本案件を実施するとのことである。
 バルーチャン第二水力発電所の周辺は、かつて民族紛争が頻発した地域であり、カレンニー民族進歩党の関係者によると、発電所の警備を目的に軍事基地が取り囲むように点在しているとのことである。一方、国際労働機関(ILO)は二〇〇一年十一月に発表した調査報告書の中で「同国内で情報を得られたすべての地域において、軍事施設の存在と強制労働の間には密接な関係があることは明らか」と明言している。また、ILOは二〇〇〇年六月の第八十八回総会において、「すべてのILO加盟国が、ミャンマーと結んでいる様々な関係を見直すこと、またミャンマーがこうした関係を強制労働の維持・拡大に利用しないこと」などの勧告を決議している。
 これらの情報から、本案件が実施された場合、派遣される日本人専門家の安全確保等を理由に、周辺の軍事基地での活動が活発化し、強制労働が一層行われることが懸念される。発電所の補修工事に直接携わるための強制労働ではなく、補修中の発電所を警備するための軍増強に伴う強制労働やその他の人権侵害が懸念される。
 私が本年三月、外務省に問い合わせたところ、国際協力事業団(JICA)が昨年八月から九月に行った基本設計調査において、「環境・社会面の周辺状況調査や紛争助長調査」が行われたとのことだが、NGOのメコンウオッチが二〇〇二年五月一日に情報公開法に基づきその基本設計調査を開示請求したところ、公正な入札を阻害するなどの理由で、不開示とされた。そのため、調査内容や方法は不明であり、本案件の実施により現地の人々の生活と人権が侵害される懸念があるので、以下質問する。

一、ILOは、二〇〇一年九月に行ったミャンマーで強制労働に関する調査において、実態を正確に把握するために、インタビューを受ける側の身の安全確保、軍による護衛の拒否、調査日程を事前に知らせないこと、通訳の独立性などについて、事前に政府から合意を得ている。この慎重な調査手法についてどう評価するか。

(答弁) 御指摘の国際労働機関の調査手法については、国際労働機関の我が国以外の加盟国から問題提起等があったとは承知しておらず、我が国政府としても、問題があるものとは考えていない。

二、JICAの基本設計調査のうち、「環境・社会面の周辺状況調査や紛争助長調査」の具体的な調査項目と調査手法については、公正な入札を阻害せず、また国の機関の内部又は相互間における率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性を不当に損なうおそれのないものと思われるので、明らかにされたい。

三、JICAの基本設計調査のうち、「環境・社会面の周辺状況調査や紛争助長調査」の結果についても、公正な入札を阻害せず、また国の機関の内部又は相互間における率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性を不当に損なうおそれのないものと思われるので、明らかにされたい。

(答弁) ミャンマー連邦(以下「ミャンマー」という。)の「バルーチャン第二水力発電所補修計画」に係る事業(以下「本件事業」という。)についてのお尋ねの調査(以下「本件調査」という。)における環境、社会面に関する調査については、国際協力事業団(以下「JICA」という。)が公表した関係するガイドライン記載の調査項目について、同ガイドライン記載の調査方法を用いて実施されたものと承知している。なお、本件調査においては、「紛争助長調査」は行われていないものと承知している。本件調査の結果は「バルーチャン第二水力発電所補修計画基本設計調査報告書」として取りまとめられており、環境、社会面に関する調査の結果に係る部分においては、周辺地域の環境及び住民生活に特段影響を与えることはないとされている。
四、もしJICAが、ILOのような慎重な調査手法を採らなかったのであれば、その調査結果が実態を正確に把握しているとする根拠は何か。
(答弁) 本件調査は、JICAのガイドラインを踏まえ、現地住民を含む様々な調査対象から幅広く意向等を聴取するなどして、可能な限り実態の正確な把握を期して行われたものと承知しており、その結果については、問題がないものと考えている。
五、今回の交換公文に基づく約六億円の資金供与の実施過程において、地域の農業用水への影響や軍による強制労働など人権面への影響に対して、日本政府は今後どのような措置を検討しているか。

七、本案件の実施中に、発電所周辺の軍事基地において強制労働が行われるなど、環境・社会面における悪影響がないことを、来年度の資金供与継続の条件とするべきと考えるが、それらの実態把握を継続的に行うために、どのようなモニタリングや評価の手法を検討しているのか。
(答弁) 本件事業はダムの貯水量に影響を与えるものではないことから、農業用水を含め、周辺の農業に悪影響が及ぶことは想定されない。また、本件事業についての資金協力については、ミャンマー政府における基本的人権の保障の在り方等に十分注意を払いつつ、これを行うこととしているところである。
六、今回の交換公文は、今年度分の資金供与であり、計画全体では二〜三年、三十〜三十五億円程度供与すると聞いているが、来年度の資金供与の交換公文を結ぶに当たり、どのような条件が満たされるべきと考えているか。とりわけ環境・社会面で満たされねばならない条件は何か。
(答弁) 本件事業については、数期に分けて実施することを検討しており、本件調査等を実施した結果、2.及び3.で述べたとおり周辺地域の環境及び住民生活に特段の影響を与えることはないとされているところ、来年度以降の資金協力に関しては、今後ミャンマー政府と協議を行った上で決定することとしており、その際には、引き続き環境、社会面についても配慮してまいる所存である。


質問主意書とは?

国会議員は、会期中、文書により国政一般について内閣に質問することができます。議長が承認した質問主意書は、次の月曜日か水曜日に内閣に転送され、その日から7日以内に内閣は答弁書を作成し、送付しなければなりません。また質問主意書及び答弁書は全議員に配布し、本会議録や参議院HPにも掲載されます。


   谷博之のメールマガジンはこちらからご覧いただけます。


    メニューのページへ戻る