国会活動報告 参議院文教科学委員会

2004年5月20日 文化財保護法改正について

159-参-文教科学委員会-18号 2004年05月20日(未定稿)

○谷博之君 文化財保護法のいわゆる施策に生物多様性の観点を取り入れるべきではないかということで、まずお伺いをしたいと思います。  この文化財保護法というのは昭和二十五年にできた古い法律ですけれども、その後、いろんな時代の変遷の中で、その文化財保護あるいは天然記念物、こういうふうな規定については、いろいろその時々の要素というものあるいはその概念というものが加わってきているというふうに思います。  そんな中で、まずこの天然物の定義ということで、その定義を見ますと、我が国にとって学術上価値があるもの、こういうふうに定義されておりますけれども、これは非常にあいまいな定義ではないかというように我々は認識をしております。  そういう意味で、今申し上げましたように、いろんな時代の流れの中で、様々な学術上の価値が加わってくる中で、特に現在では、生物学的、生態学的な価値というものもやはり含まれるべきではないのか、このように考えておりますが、冒頭、この辺についての御見解をお伺いしたいと思っております。

○政府参考人(素川富司君) お答え申し上げます。  天然記念物の定義に関します学術上の価値ということについてのお尋ねでございます。  天然記念物は学術上貴重なものということでございますが、その学術的価値につきましては、先生御指摘ございましたような生物学的、生態学的、またさらには遺伝学的とか進化学的、幅広い学術上の価値がその中に含まれているものというふうに理解しているものでございます。

○谷博之君 そういうことからすると、生物多様性というふうな概念も含まれてきているというふうに我々は理解をしておきます。そして、文部科学省の告示の中に天然記念物の指定基準というものがございますが、この指定基準の中に、例えば、今の御答弁を踏まえるとすれば、日本の生物多様性の保全上貴重な動植物という、こういう一つの一項目を新たに加えてもいいのではないかというふうに思いますが、どのように考えておられましょうか。

○政府参考人(素川富司君) 今御指摘ありました希少性のあるものというようなことは、明示的な文言はございませんが、基本的には、生物多様性を踏まえた希少性ということは、私ども、その指定に当たっての価値判断の観点ということでは十分含めて考えて対応しているというところでございます。

○谷博之君 続きまして、文化的景観の指定の問題をお伺いしたいと思いますが、今回の法改正で、いわゆる文化的景観の指定ができるということになったわけですけれども、そうしたことを受けて、天然記念物の保護との関係でこうした指定というものを十分活用すべきだというふうに思っています。  例えば、いろいろ私も関心があるわけですけれども、トキとか、あるいはコウノトリとか、あるいはまたイリオモテヤマネコ、あるいはアマミノクロウサギ、あるいはジュゴン、ヤンバルクイナ、こういうようないわゆる希少の動物、鳥類も含めて、こういうようなものを、言うならば天然記念物として指定を受けているこういう動物というのは、そのかなりの部分がいわゆる種の指定ということになっていまして、生息地を守るという、いわゆる生息地域の指定というふうにはなっていない。したがって、こうした非常に希少動物の保護というものがなかなか全体として十分できないというふうなことがあります。  例えば、そういう中で、ヤンバルクイナとかアマミノクロウサギだとかって、そういうふうな希少動物を保護するとすれば、その島なら島全体を、言うならば生息地の指定ということでしなければ、本当の意味の保護はできないということになるわけですね。  そういう点からすると、この文化的景観という新たな枠組み、こういうものを活用することによって、例えば佐渡島でいえば、トキがその水田地帯に例えば自然にそこにすむような形、これ将来の話、そういうすばらしい夢を持っているわけですが、そういうようなものの、トキのいる例えば田園とか、そんなようなことができてきて、そしてそこの農業を営むそういう地域の人たちもそういうふうな生息のための協力をするとか、そしてそれは例えば中山間地域に指定されておりますけれども、中山間地域等の直接支払保証制度、こういうふうな制度なども新たに作るなどして、そういう生息地全体の保護、それと文化的景観の指定地域と、これをドッキングさせるという、こんなようなことも実は考えていってもいいのではないかというふうに思っています。  そこで、今回、そういう意味で、特に重要文化的景観については今申し上げたような生物多様性という観点から、どのように選定して指定をしようとしているのか、保存をしようとしているか、お答えいただきたいと思います。

○国務大臣(河村建夫君) 大事な指摘をいただいたと思います。  今回のこのいわゆる重要文化的景観、いわゆる文化的景観をいわゆる文化財として保護し、守っていき、将来に残していこうという、この文化財保護の概念を広げてまいったわけでございます。そういう観点から立ちまして、また国土交通省、関係省庁から出ております景観法、これが一般法として全体の網を掛けてまいります。その中で、市町村が申出があった中から、国が特に重要と思われるものについて重要文化的景観という指定をしていくわけでございます。  そんな中で、今、谷先生御指摘ありましたように、いわゆる天然記念物の保存、保護といいますか、その景観地域の中に天然記念物があった場合の配慮の問題、これ私は非常に大事なことでありますから、当然その市町村等が策定してまいります重要文化的景観の保存管理計画の中にこの天然記念物の保護を言及し、これに配慮する、こうした管理が行われるべきであろうと私も考えておりまして、そういうものが出ていない計画についてはこちらからまた助言をしなきゃならぬと、こう思っておりますが、これ正に市町村からの申出によって国の方でということでありますから、当然そういうものが入ってくるだろうというふうに私は考えておりますが、そういう視点が大事でありますから、既に事前の調査等々によってどういうところがあるか、百八十ぐらいのところが事前にそういう候補として上がったりしておりますが、その中にも既に天然記念物がおるところもあるわけでございます。  今後、そういう問題必ずあるという前提に立って、十分その点を配慮して、天然記念物の保存、保護、そういうことも配慮しながら全体のその景観の指定というものに取り組んでまいりたいと、こういうふうに思います。

○谷博之君 どうも大変ありがとうございます。是非、そういうことで御検討いただきたいと思っています。  それから、今日、環境省から小野寺局長にもお見えいただいておりますが、実は私ども国会議員の中でラムサール条約の登録湿地を増やす議員の会という会がありまして、清水嘉与子先生に会長を就任いただきまして、百名を超える議員の会ができております。現在、ラムサール条約の日本の登録湿地は十三か所、これを二〇〇五年までに何としても倍増しようということで、これは国際条約の一つですからスイスに本部がありまして、そこに申請をして登録の指定を受けるということになるわけですが、そういう意味の、今環境省を中心にしたそういう準備作業に入っていると、そういうことでありますけれども。  いわゆるこのラムサール条約の登録候補地にはいわゆる棚田とかあるいは水田、水郷など、いわゆる人工的な湿地も当然含まれておりますね。そこで、ラムサール条約の登録に当たっては、こうした今出ております重要文化的景観も、いわゆる国内要件の一つの要件というとちょっときつくなりますが、指定をするための一つの判断の基準になる、このような形でこれから考えていってもいいんじゃないかなという気がしているんですが、これについてはどのように考えておられますか。

○政府参考人(小野寺浩君) 委員御指摘のとおり、棚田、水郷といった人工的湿地についてもラムサール条約に定義されている湿地の概念に含まれるというふうに我々は考えております。  一方で、ラムサール条約の規定、あるいは指定実態というものを見てみますと、定期的に多数の水鳥の生息場所となっていること、絶滅のおそれのある種の生息であることなどの生物学的な基準を満たすことが求められているところでございます。  御質問の重要文化的景観として選定された地域がこのような生物学的な基準を満たし、かつ保護のための担保措置が取られていればラムサール条約の登録の候補になり得ると考えております。  もう一度重ねて言いますと、地域の人々と自然が長い年月の中で調和した日本独特の自然環境というのは非常に重要であるというのが我々の認識でありますので、今後とも、そういう観点で保全に努めてまいりたいと考えております。

○谷博之君 今後、こうした課題については、いろんな意味で議論をさせていただきたいというふうに思っております。  最後になりますけれども、日本は昔から非常に木の文化、いわゆる木材、樹木ですね、これが非常に誇れる国であるというふうに思っていまして、それに関係をしまして古事の森構想についてひとつお伺いしたいと思います。  古事の森というのは、昔の古事記の古事ですね、古いというのに仕事の事と書きますが、古事の森。これは、実は私も栃木県の宇都宮、昨日、今日と暴力団の騒ぎで大分有名になりましたけれども、その地元でございますが、そこで、作家の立松和平さん、同じ年代で、小さいころからずっと一緒に活動してまいりました。彼が提唱しまして古事の森構想というのを実は今、実現をしようということで取り組んでおります。  これはどういうことかというと、日本には非常に、何百年何千年と続く古い神社仏閣がございます。こういう建物というのは、大体、専門家の話を聞きますと、短くて二百年、長くても四百年で、どういうふうに途中修理をしてもこれは建て替えざるを得ないというようなことが言われておりまして、そういう二百年から四百年、将来の先に向かってヒノキを中心としたそういう日本のすばらしい木をみんなでどう育てていくのかということで、いわゆるボランティア活動としてこの古事の森構想がスタートしました。  そして、今から三年前に京都の鞍馬で、林野庁の御協力もいただきながら国有林を第一号の指定にしてスタートしました。そして、昨年は、茨城県の八郷町など四件、今年度は岡山県と岐阜県で同じくやはりヒノキの植樹が、植林が予定されていると。こういうことで、小修理については五十年に一遍ぐらいで手を加えていけば対応できるけれども、全体の建て替えについてはそういうことをしないと、日本の幾ら建造物といってもそれはもたないというふうなことを言われています。  こういうことの中で、私どももそういう活動に参加をさしていただいているわけでありますけれども、しかし、そのときに、林野庁のこの事業に対する具体的な取組というのはどうなっているかということでちょっと予算を調べてみたわけですけれども、初年度のみの予算が付いておりまして、これもイベント用等に使う予算も含めてわずか数百万円程度の予算しか付いていない。つまり、もう木の苗木ぐらいの予算しか付いていないというわけですね。  これは、四百年というと、もう何代も続くそういうふうな社会的な事業でありまして、一人の人間が亡くなって、その次の代が継いで、そして更にその次の代が継いでということで、何代も続いてそういう日本の伝統文化を守る、そういうふうな木材を育てていくということですから、これはもう気の遠くなるようなそういう事業だと思うんです。  今申し上げたように、こういうふうな貴重な森林を後世に引き継いでいくためにも、文化庁としてももっと積極的にこういうふうな活動にも協力をしていく必要があるだろうと。そして、なおかつ、重要文化的景観の選定対象としてこういうふうな古事の森を指定をするということも私は非常に大きな意味があるというふうに思っておりますが、そのお考えをお聞かせいただきたいと思います。

○副大臣(稲葉大和君) 今、谷先生の御質問の中にもございましたように、古事の森構想、この構想に基づいて鞍馬山の国有林が平成十四年、この植樹をされ、また十五年におきましてもほかの地域においても植樹されている経緯がございます。  私どもとしましても、いろいろな報道あるいは文献によりまして、日本の古来の文化であります神社仏閣あるいは仏像、木造の仏像等について様々な修復のフィルムを拝見しております。近年では、特に法隆寺の復元あるいは東大寺南大門の金剛力士像の修復、復元、こういう事案にぶつかるたびごとに、その部材をどこから調達してきたのか、またその調達すべき部材が存在するのか、こういうことが大変気掛かりになっております。  こういうことも含めまして恐らく古事の森構想というプランができ上がったものと存じているわけでありますが、いかにも、今三年を経過したときに、どれだけの生育度があるのか。特に今、先生がおっしゃられるように、大事な、重要な材木であります、部材であります森を大切にしよう、林を大切にしよう、こういう観点からしましても、また、この重要文化財、重要文化的景観、この定義からしましても、自然とのなりわいの中、生業の中、生活の糧の中で人間が作り出してきたその景観について保護の対象にしよう、こういう目的を持ったプランでございますので、ある程度の年月というものはこれの中に自然と条件化されてくるのかなって、そういう気もしてなりません。  いずれにしましても、これからの具体的な指定の物件につきましては、市町村から申出を受ける、あるいは審議会において審議をする、実地調査をする、こういう過程を経まして具体的に候補者の選定をしてまいる、こういうことになっておりますので、当然、先生が御指摘の案件につきましても、今後、その選定の候補の中に加えさせていただきながら、選定基準を図ってからなるべく選定できるような、そういう方策を検討してまいりたいと思っております。

○谷博之君 時間が来ましたから、もう最後に一点だけ要望さしていただきますが、私どももいろんなところで勉強さしていただいておりますと、日本は確かに木の国ですけれども、意外とそういう、有名なそういう神社仏閣の建て替えのときの今おっしゃった部材、こういうものが、やっぱりいいものがなかなか少なくなってきているということですね。それをやっぱり意識的に、二百年後、四百年後まで見据えてというのは、これも気の遠くなる話ですが、やっぱり今から後世にそういうものを届けていくということが大事だと思いますし、そしてそれは当然人手が必要です。これは国有林を今使っていますけれども、当然それは民間の森林ボランティアの人たちが中心になって、この森の管理から、それから植林から全部やっているわけですね。こういう意味では、この地域の中からそういう、遠大なやっぱりそういう活動を広げていくというこの構想は、やはり私は非常に大事なことだと思っておりますので、今、副大臣からも御答弁ありましたけれども、是非何らかの形で今回の法案のこのいわゆる重要文化的景観の中に位置付けていただけるような、そんなような検討を前向きにしていただきますようにお願いをしまして、私の質問を終わります。  ありがとうございました。



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