2002年6月25日
医療の信頼性の確保向上のための医療情報の提供の促進、医療に係る体制の整備等に関する法律案(クリックすると法案が読めます)提案理由説明
ただいま議題となりました「医療の信頼性の確保向上のための医療情報の提供の促進、医療に係る体制の整備等に関する法律案」につきまして、民主党・新緑風会を代表して、その趣旨及び内容の概要を御説明申し上げます。
近年、医療事故の多発、事故の際の医療機関側の不適切な対応の相次ぐ発覚などによって、国民の医療に対する信頼は大きく揺らいでおります。また、患者の権利意識の向上等を背景に、医療を提供する側の権威主義的な対応や、診療情報が十分に提供されていない現状に対し患者の側が強い不満を持つようになるなど、患者と医療を提供する者との関係のあり方が改めて問われるようになっております。
そもそも、医療は、患者を中心として、患者と医療を提供する者との共同作業として行われるべきものであり、医療が患者の理解と選択に基づいて行われるためには、医療を提供する側が診療情報を積極的に開示することにより情報が共有化されることが必要です。そして、そのことによってはじめて、患者と医療を提供する者との間に信頼関係が生まれ、良質かつ適切な医療が行われることが可能となるともいえるのです。
しかし残念ながら、現実は、医療を提供する側の意識改革も、そのための体制の整備も十分に進んでいるとはいえない状況にあります。また、診療情報の開示等の法制化はいまや世界的な潮流となりつつあるにもかかわらず、我が国では、一部に根強い慎重論などもあって、それらに関する法制度は未整備のままです。この点、法制化に消極的な医師会の側では診療情報の提供に関する指針を作成するなどしておりますが、医療を提供する側の自主的な対応に委ねるだけで現在の問題状況を変えることには限界があり、診療情報の開示に関する法制度の整備が必要不可欠であります。そして、診療情報の開示の法制化は、自己情報のコントロール権を医療の分野で保障することにもつながることになります。
他方、医療において何より優先されなければならないのは患者の安全であり、そのためにも医療事故の防止体制を確立することが急務であり、その点から、事故やヒヤリハット事例の情報が医療機関内で収集され再発防止策として生かされるシステムの整備、医療事故が発生した場合の情報開示の徹底が不可欠となっております。また、医療に関しては医療技術の進歩等も相まってその質が問われるようになっており、医療の質の向上と効率化を進める手段として、科学的根拠に基づいた医療、医療の第三者評価を促進することの重要性が増しております。
この法律案は、以上のことを踏まえ、患者の理解と選択に基づいた医療の促進、医療の透明性と安全性の確保等を目的として、患者に対する医療情報の提供と、安全かつ適正な医療を確保するための体制の整備ということに特に着目をし、それらに必要な基本的事項等について定めるものであり、そのことによって、医療の信頼性の確保及び向上と、患者の権利利益の擁護を図ろうとするものであります。
次に、この法律案の内容について、その概要を御説明申し上げます。
第一は、基本的理念及び責務であります。医療が患者と医療従事者との信頼関係の下に患者の理解と選択に基づいて行われること、診療情報が患者と医療従事者との間で共有化されるべきことなどを基本的理念として定め、これを受けて、医療機関と医療従事者、患者等の責務についても規定しております。
第二は、医療機関に関する情報の提供であり、医療機関は、その体制、施設設備、実績等を記載した書類を備え置き閲覧させるとともに、患者の権利等につき医療機関内に掲示すべきものとするほか、医療機関の広告の規制緩和について、原則自由化の基本的な方向を示しつつ別に法律で定めることとしております。
第三に、診療に関する説明等であります。医師及び歯科医師は、診療に関し適切な説明を行い、患者等の求めに応じてその概要を記載した書面を交付するとともに、説明と異なる診療又は適切でない診療が行われた場合には、速やかに患者等に対しその事実などを報告しなければならないものとしているほか、患者等は、診療について医療適正化委員会に相談することができることとしております。
第四に、診療記録の開示及び訂正等であります。患者、遺族等は診療記録の開示を請求することができ、医療機関の管理者は患者に悪影響を及ぼす場合などを除き診療記録を開示すべきこととしているほか、診療記録の情報に事実に関する誤りがあるときはその訂正等を請求できるものとしております。また、医療機関は、患者等から申出があったときは医療に要した費用の明細書を交付するものとしております。
さらに第五は、安全かつ適正な医療を確保するための体制の整備であり、医療機関に医療事故防止の具体的指針の策定などを求めるとともに、一定規模以上の医療機関にその構成の中立性に配慮した医療適正化委員会の設置を義務付け、医療事故及びその防止対策の調査審議などを行わせるほか、重大な医療事故が発生した際の都道府県知事等に対する報告を義務化しております。また、適正な医療等を促進するため、医療技術評価及び医療の第三者評価の促進についても規定をしております。
そして第六は、苦情の解決であり、医療適正化委員会に対する患者等の苦情の申出とその処理手続、都道府県等による苦情に関する相談やあっせん等について規定しております。
なお、この法律は、公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日から施行することとしております。
以上が、この法律案の趣旨及び内容の概要であります。
政府が提出している健康保険法等の改正法案は、医療制度の抜本改革を先送りにして、国民に負担増と給付の削減だけを押し付ける内容であり、「三方一両損」、「三割負担が抜本改革につながる」などといった論理は国民の理解と支持を得られてはおりません。これに対し、民主党は、医療保険財政のみに偏ることなく財政と医療サービスの内容の二つの側面から整合性を図るという視点に立ち、かつ、患者を「消費者」ととらえることを基本とする医療制度改革案を発表しており、本法律案はその改革の主要な柱の一つを成すものとなっております。そもそも、医療制度改革を進めていくためには、その前提として、医療そのものが国民に信頼され、かつ、医療を取り巻く環境の変化に十分対応し得るものとならなければなりません。この法律が定める医療情報の提供と安全かつ適正な医療の確保はまさにその基盤ともなるものであり、そのような意味からも、この法律の制定が是非とも必要です。委員各位には、本法律案の趣旨と意義につきまして十分に御理解を賜り、慎重に御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。