谷博之国会活動

参議院本会議
2001年11月16日
補正予算三案に対する反対討論 初めて本会議の壇上に
 

 私は民主党・新緑風会を代表して、政府提出、平成十三年度補正予算三案に反対する立場から討論をいたします。 私の郷土の誇り、田中正造翁が帝国議会議員の職を辞し、足尾の鉱害について天皇に直訴してはや百年。その田中正造翁は「真の文明は 山を荒らさず、川を荒らさず、村を破らず、人を殺さざるべし」という言葉を残しました。総理。この言葉の意味を十分に噛みしめながら、私の反対討論をぜひお聞きいただきたいと思います。
 今、日本経済を景気低迷とデフレの泥沼から救うために、行わねばならないことは何か。それは、財政再建と不良債権の抜本的処理、規制改革と、そしてセーフティネットの整備を、一刻も早く、断行することです。遅れれば遅れるほど、将来の選択肢をせばめ、国民の苦しみと痛みをより大きくすることになる。われわれ民主党は、「改革は、スピードをもって行わねばならない」と主張してきました。
 今回の補正予算のベースとなっている「改革先行プログラム」の中味を拝見すると、一見、民主党の主張が取り入れられているかのように見えます。しかしよく読めば、従来の自民党の手法と何ら変わりがない。バラマキとごまかしと先送りに満ちた、括弧付の「改革」にすぎないことがわかります。内閣府が現時点で実施したと説明するものはみな、「見直す、検討する、調査する」の三点ばかりであります。
 国民の安心につながる年金や医療制度の改革も遅々として進まず、与党には先送りの声さえ上がっている。これではこの半年間、何もやっていないのも同然と言わざるをえません。にもかかわらず、総理は「まだ半年だ」と居直った答弁を繰り返すだけです。私には、国民の苦しみと痛みをできるだけ小さくしようという熱意が全く感じられません。確かに、補正予算に限れば、国債発行三十兆円枠を形だけでも守り、公共事業という名のバラマキを増やさなかったと言えるでしょう。 しかし、三十兆円という単なる数字合わせに力を注いだ結果、改革に必要な予算を盛りこんでいない、という指摘さえあります。

 そうした中で以下、民主党として、補正予算に反対する理由を、次に三点述べさせていただきます。その第一の理由は、補正予算の目玉とされる雇用対策の内容があまりにもお粗末な点であります。過去最悪の雇用情勢にあって、雇用のセーフティネットを整備し勤労者に安心感を与え、構造転換に向けた職業訓練を推進することが、今何よりも求められています。
 しかし、その柱となる「緊急地域雇用創出特別交付金」は、雇用期間が最長六ヶ月に限定され更新ができません。成長分野への雇用奨励金もほとんど使われてこなかった。そんなものを以て三年間で百万人もの雇用創出に資するという。これこそ対症療法的、バラマキ、そして「絵に描いた餅」と言わずして、何と呼ぶべきでしょうか。セーフティネットとしての機能は全く不十分です。総理。これでは総理はまさに厚顔無恥のそしりをまぬがれないのではないでしょうか。
 我が民主党は、雇用の創出こそ最善の策と考えます。自治体がアイデアを競う雇用創出策のほか、中小企業や女性起業家、NPOの育成支援、民間活力の導入でミスマッチの解消をめざす施策などを提案しています。人的投資を重視した抜本的な雇用対策の実施こそが今何よりも求められているのです。
 しかし政府には我が党の提案に貸す耳を持っていない。従って私たちは抜本的改革のないまま「セーフティネット」に名を借りたバラマキ政府案には、到底容認できないのであります。そして第二は、前年度剰余金を全額補正予算の財源とし、財政法の趣旨を捻じ曲げている点であります。これは本来国債の償還に充てられるべき財源です。それを流用するのは、国債の新規発行と本質的になんら違いはなく、今年の国債発行を見せかけだけ三十兆円に抑えるための小細工にすぎない。このような措置は到底容認できないのであります。
 八千三百億円もの義務的経費が計上されている点も、私には見逃せません。義務的経費は生活保護費など支出が義務付けられている予算であり、当然、当初予算に計上するべきものであります。しかし近年は毎年、四千億円から八千億円もの巨額が補正予算で手当されることが常態化しています。年度当初では甘く査定しておいて、補正で追加しようというわけです。総理。これを「姑息」と言わずして何と呼ぶべきでしょうか。当初予算の帳尻合わせのための補正予算など、断じて認められません。
 そして第三は、予算の大胆な組み替えをしていない点です。政府は既定経費を一.一兆円節減したと大々的にうたっていますが、その大半は、超低金利のおかげで国債の利払いが少なくて済んだに過ぎません。あとは、もともと十五パーセント多く見積もるのが慣例の庁費を例年通り削り、例年通り人事院勧告に基づいて人件費を減らしたにすぎないではありませんか。節減という美名にはまったく値しないのであります。
 例年通りの予算執行状況であれば、十一月末時点で未契約の公共事業が二兆円程度はあるのではないでしょうか。無駄なものは中止して、少しでも多く予算を雇用対策に回すという努力はまったくなされていません。これでは、森前政権下で策定された今年度のバラマキ公共事業関連予算を、現政府が是認していることに他ならず、到底容認できないのであります。

 以上、本補正予算に反対する主な理由を申し述べてまいりました。

 総理。総理は五月の就任時の所信表明で、長岡の小林虎三郎が米百俵を食べずに売って学校を建てたという故事を紹介されました。実はあの戯曲は、栃木県出身の作家山本有三が書いたものであり、私もその志に胸打たれる者の1人であります。時代は今、田中正造翁がまさに恐れたような、「山が荒れ、川が荒れ、村が破れ、人が殺される」国家と地球の危機にあります。そんな暗い世相の中、総理は就任以来すでに半年の時を経ようとしているのであります。
 総理。総理は「米百俵」を売って国民にどんな希望を与えてきたのでしょうか。景気刺激の効果も、雇用創出の効果もない、子孫の借金を膨らませるだけの補正予算という「米俵」を与えることだけは、断じて許せません。今こそ私たち政治家は、「真の文明」実現に向け、国民が未来に夢と希望を持てるような、大胆な施策を、迅速に講ずるべきなのであります。

 以上申し述べ、私の反対討論を終わらせていただきます。                    (了)
 


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