2002年10月29日

国際協力銀行総裁 篠沢 恭助 殿

環境社会配慮ガイドラインに基づく異議申立手続についての申し入れ

貴職におかれましてはますますご活躍のこととお慶び申し上げます。

 さて、国際協力銀行が本年4月に制定した新しい環境社会配慮ガイドラインは、国際的に高い評価を受けており、これにより、今後、円借款ODAや民間企業への融資が、発展途上国の人々に深刻な環境社会被害を与えないことを期待しております。そのためにも、ガイドラインの遵守を確保するため、現在国際協力銀行が検討を進めている「異議申立制度」は極めて重要であります。 
 しかし、国際協力銀行が10月24日に公開した異議申立手続要綱案にはいくつか重大な問題があると言わざるをえません。
 第一に、異議申立を受けつけるのは融資契約調印後となっています。この制度の重要な機能の1つは、できるだけ早い時点でガイドラインの不遵守による問題を発見し、対応を検討することにあります。類似の制度を持つ世界銀行などの国際金融機関はいずれも融資契約調印前でも異議申立を認めています。世界銀行では、これまで3件が融資契約調印前に申し立てられ、うち2件は融資が行なわれませんでした。環境社会被害を未然に防ぐためには、融資契約調印前の異議申立を認めることは不可欠だと考えます。
 第二に、申立の対象となる被害は、実際に起きているものか、もしくは「確実に見込まれる重大な被害」に限られています。発展途上国の住民の立場から考えれば、絶対に重大な被害が起きるかどうかを証明することは難しく、むしろ起きる可能性がある被害を全て回避するのが国際協力銀行の審査の役割だと考えます。他の国際金融機関でも、申立の対象を「起こりうる被害」(likely)としていることを考慮すれば、住民たちに「確実に重大な被害が起こる」ことを証明させるべきではありません。
 第三に、国際協力銀行の案は、いわゆる並行二重手続の防止を重視し過ぎています。国際協力銀行が、審査やモニタリングの過程で、自らのガイドラインを遵守しているかどうかを調査する制度なのに、なぜ当該国や日本で何らかの係争中のプロジェクトだとその調査が行なえないのか理解できません。先例となる国際金融機関にも、こうした条項はなく、国際協力銀行の案からも削除されるべきです。 
 第四に、環境担当審査役(仮称)は独立性と中立性が極めて重要な機関にも関わらず、独立した調査権が制限されています。環境担当審査役(仮称)やその事務局は、ヒアリングや文書請求などの調査を、国際協力銀行の投融資部署を通さず行なえるようにするべきです。そうでなければ、独立性と中立性が損なわれる恐れがあります。
 第五に、国際協力銀行の案では公開される情報がかなり限られています。異議申立制度がうまく機能するためには、プロセスの透明性とアカウンタビリティの確保が極めて重要です。現在提案されている案では、ほとんどの情報が公開対象になっていません。異議の受付から最終的な報告書が出るまでの節目節目で、ホームページなどを通じた情報公開を徹底すべきだと考えます。
 以上の5つの点は、環境社会配慮ガイドラインの遵守を確保する異議申立制度を、発展途上国の被害住民が問題解決のために利用しやすくし、また公的機関としてのアカウンタビリティを確保し、かつ、国際的な水準にするために、欠かせない要素と考えます。現在行なわれているパブリック・コンサルテーション・フォーラムのプロセスの中で、こうした点を是非とも考慮して頂き、国際社会に誇れる異議申立制度にして頂きたく、ここに申し入れを致します。

衆議院議員 阿部 知子 衆議院議員 北川 れん子
衆議院議員 佐藤謙一郎 衆議院議員 首藤 信彦
衆議院議員 原 陽子 衆議院議員 保坂 展人
参議院議員 岩佐 恵美 参議院議員 岡崎トミ子
参議院議員 加藤 修一 参議院議員 小宮山洋子
参議院議員 谷 博之 参議院議員 千葉 景子
参議院議員 中村 敦夫 参議院議員 広中和歌子
参議院議員 福島 瑞穂 参議院議員 福山 哲郎

日時:102913:30 14:20 
場所:参議院議員第二会議室
出席者:議員(五十音順)岡崎トミ子、北川れん子、谷博之、中村敦夫、福島瑞穂、福山哲郎国際協力銀行篠沢恭助総裁、矢島総務部次長他2

◎谷 国際協力銀行の異議申立て手続きについて申し入れをしたい。まず申し入れ書に対してご回答をいただき、質疑、またそれに対するご回答をいただきたい。

◎総裁 異議申立て制度についてはパブリックコンサルテーションをこれまで10回開催し、いろいろなご議論、ご意見をいただいた。いただきました申し入れ書に対して説明・回答する。
 被害の発生の立証責任については現地地域住民に過重な負担をかけないよう、たとえば相当程度蓋然性が高いというような文言に書き換えることを検討する。
 紛争が存在しており当該国で紛争解決・訴訟審議が進んでいるのであればそれを見て判断すべきなので異議申立てに対し一律却下ではなく審査役に手続きの留保・中止の裁量権を与えようと考えている。この修正はコンサルテーションを開く中でなされた。
 融資契約前に異議申し立ての受付はできない。審査結果は審査役が審査後速やかに公表する。経過については審議の中立性ということもあり当事者以外には公表しない。融資契約調印において、アメリカやフランスなど競合する諸外国によって様々な異議申し立てが事前に入るとやりにくい。融資契約の前に異議申し立てを入れると面倒だということで自分たちはすばやく意思決定ができますよ、と他国に有利になる。他国が住民にそそのかして異議申し立て機関を使って融資契約を妨害することもある。事前の話については譲れない。活動の独立性を保ちたい。世銀は理事会が諮問機関として置いたもの。国際協力銀行は環境と投融資部門が独立しているので、世銀とは違う。世銀の意思決定の方法とは異なり、事前の申立て受付は制度上問題がある。国際金融機関と同一化することは難しい。

◎谷 今の話の中で融資契約が決定していない前の異議申立てができないというのはどうなのか。

◎福島 融資契約前に異議申し立ての受付はできないとのことだが、環境ガイドラインに基づいているかどうかは融資前に異議申し立てしなければ意味がないのではないか。

◎福山 審査経過は公表しないとのことだが、結果しか見えないわけだから不透明で余計混乱するのではないか。過程を明らかにしたほうがよい。

◎中村 チェック議員の会でいろいろな事例を見ているが融資契約がなされ動き出してからは止めるのは非常に難しい。費用も莫大にかかる。案件の事前の審査段階、契約前に不適当と考えられるものは融資契約しなければよい。

◎北川 異議申立てという言葉使いがが悪いのでは。何か疑義をはさまれるというようなイメージがあって慎重になる。双方向からの対話を調印前にすべきではないか。

議員の質疑は融資契約前の異議申立て受け付けという点に集中して熱の入った議論が行われたが、総裁は国際協力銀行の従来からの主張を繰り返すのみで、平行線のまま時間切れを理由に約50分間で終了した。
(文責:谷博之事務所)