国会活動報告 参議院本会議

2003年7月24日 防衛庁長官 石破茂君 問責決議案 賛成討論

 私は、民主党・新緑風会を代表いたしまして、ただいま議題となりました防衛庁長官 石破茂君の問責決議案に対し、賛成の立場より討論を行います。

 自民党、公明党、保守新党の連立政権はいままさに、わが国自衛隊を戦場に送ろうとしています。その現場指揮官として陣頭指揮を行っている石破防衛庁長官は、憲法破りの先陣であり、平和を希求する私たち野党がこれを看過することはあり得ないのであります。よって石破君の問責決議は余りにも当然であると考えます。

同時に石破君は自らが指揮する自衛隊員からも不信任を既に突きつけられている可能性が極めて高いと考えられます。中東のゴラン高原に派遣されている国連兵力引き離し部隊は、イスラエルとシリア両軍を引き離す非武装の「兵力分離地域」があることから「安全なPKO」と言われて来ました。しかし1974年に派遣され、現在でもこの「安全なPKO」で活動をし続けている自衛隊でさえ、派遣隊員に対して「ファストフードは持ち帰り」「ヒッチハイクには応じない」と注意を重ねており、隊員自身も「バス停は近寄らず、レストランにも入らない」と、自らに迫る危険をひしひしと感じているのであります。

そうした具体例一つとってみても今回、総理を筆頭に、防衛庁長官でさえ「危険に遭遇する可能性が排除できない」とするイラクに自衛隊を派遣することに対して、誰より怒りを感じているのは、自衛隊員とそのご家族の皆さんご自身ではないでしょうか。

5月1日の米ブッシュ大統領の戦争終了宣言の後も、100人以上の米英兵がイラク各地のゲリラ攻撃などで、戦場での不幸な死を遂げています。これは戦後日本の駐留軍の状態とは明らかに異なり、ベトナム戦争当時の南ベトナム駐留軍の状態に近いと思われます。

イラク駐留米軍を率いるサンチェス司令官は7月23日の記者会見で、フセイン元大統領の息子ウダイ、クサイ両氏の殺害が、頻発する米兵襲撃の沈静化に向けた「転換点」になるとの認識を示し、ブッシュ大統領も同日「旧フセイン政権が復帰することはない」と記者会見をしましたが、肝心のフセイン元大統領の生死は明らかでなく、今後もゲリラ攻撃が止む保証はありません。

自衛隊の陸幕長は先月の記者会見で「隊員が迷うことなく、自信を持って任務を達成できる条件を整えてもらいたい」と穏和な表現で、制服組の心情を吐露しました。推察するに、実際に戦場に赴く自衛隊員としては最低限「法律の根拠」「国民世論の支持」「能力を発揮できる装備」を備え、堂々と派遣されたいというのが、その本音なのだと思うのであります。しかし、現実は大きく異なる様相であります。先日の全国紙の世論調査では、国民の過半数が自衛隊のイラク派遣に反対しています。装備については、野党のみならず、与党からも不十分であるとの意見も多く聞こえてきます。

さらに仮に「イラク特措法案」が成立したとしても、これが本当に十分な法的根拠となるのかどうかも、定かではありません。なぜなら、政府の言う「安全な地域」とは政府が勝手に作り上げたフィクションである可能性が高く、実際上は明らかに戦闘地域である可能性が高いと考えられるからであります。

本来なら自衛隊員の安全確保に真っ先に責任をもつべき防衛庁長官が、全く自衛隊員の安全を顧みず、只々アメリカの歓心を買い、自衛隊の海外派遣の実績をつくりたいばかりに、戦地へ自衛隊を送り込もうとしているのであります。

さらに現内閣は自衛隊員の心情を踏みにじるような発言を重ねています。小泉総理は先の国会答弁において、「戦って相手を殺す場合もないとは言えない」と自衛隊員があたかも当然のように殺人に及ぶケースを想定した発言を行いました。しかし、自衛隊員が何の心の苦しみもなく人に対して銃口を向けられると考えているのでしょうか。人に銃口を向け、ましてや発砲するようなことは誰にとっても嫌悪すべきことであり、好む人は誰もいません。それを自衛隊員は「国土防衛のため、国民の生命財産を守るため」と信じ、自らを鼓舞して行うのです。このような人の心を総理は理解しているのでしょうか。そして石破防衛庁長官は総理に理解を求めたのでありましょうか。長官は、仮想であっても「死者」が発生するような実践的な訓練を、現在の自衛隊がほとんど行っていないことを誰よりも承知しているはずです。訓練も行わず、心理的な壁が極めて高い「人を撃つ」という行為を、安易に自衛隊員に求める現内閣の姿勢に対して、多くの自衛隊員は不信感を募らせています。防衛庁長官として、現に部隊を預かる石破君に対して自衛隊員の皆さんは私たちと同様に、もしかしたら私たちより強い気持ちで、不信任を突きつけているとも考えられます。

そしてそうした立場からも、私たちの問責決議案は、国民の多くの気持ちを代表するものであり、実際に戦地へ追いやられる自衛隊員の気持ちをもっとも強く代表するものであります。   「泥沼化」或いは「ベトナム化」しているとも言える厳しい戦場にあって、イラク駐留米兵の間にも不満が高まっています。それは米ABCの現地レポーターのカメラの前で「ラムズフェルト国防長官がここにいたら、すぐ辞めろといいたい」という陸軍兵士の声にも代表されています。米陸軍の現在の常備兵力は43万人といわれ、そのうち、イラク、アフガニスタンなど12か国に39万人が派遣されており、交代要員はほとんどいません。来年11月の次期大統領戦を前に政治的な理由から、予備役あるいは州兵の動員はできないでありましょう。従って長期駐留を強いられるだろうことは間違いありません。   最初の思惑とは違って、長期駐留を強いられる軍は、犯罪に走る危険もあります。すでに報道されているだけでも、バグダッドなどの銀行の金庫から多額の米ドル紙幣を持ち出して捕まったグループがありました。さらに又最近のニューヨークタイムズ紙上では、「終戦時には無事だったバクダット空港で免税店などにあった高価な時計などがすべて盗まれた、飛行可能だった旅客機3機の部品なども多数略奪された・・・これらは米兵の仕業である」との報道もなされております。   そこで例えば、自衛隊員がこうしたことを現地で目撃したとき、どういう態度をとるのでしょうか? 米兵の犯罪者を手助けして分け前を手にするのでしょうか? 銃を突きつけて逮捕するのでしょうか? 「想定していない事態に対する質問には答えられない」との答弁を連発する長官には、どう指揮するのか、全くその対応策が浮かばないのではないでしょうか。   さらにはアフガン支援のためにインド洋にいる海上自衛隊護衛艦では、規律違反の飲酒が頻発しています。石破長官はこうした事態にもそれを防ぐことができない無能をさらけ出しています。

又一方、国連高等難民弁務官事務所、UNHCRを通じて、3月31日に、1600人分の難民用テントを政府専用機に乗せて武装自衛隊員がヨルダンのアンマンまで運んだ支援の妥当性についても、木で鼻をくくったような政府答弁書や衆議院での石破長官の答弁がありました。1億円かけて160張のテントを運び、現実には結局10張しか使われていない、とどのつまりは難民1人あたりの仮住まいに100万円もの支出をしたという経済的合理性のかけらもない支援も現に行っているのであります。

しかもこの支援は、物資のあふれるヨルダンのUNHCR現地事務所が望んだものではなく、日本政府からジュネーブ本部に話をもちかけ行われた支援であったことは状況証拠からみてもすでに明らかなことなのであります。つまりPKO法でまず自衛隊派遣の実績を残し、今度のイラク支援法で自衛隊を派遣することにつなげていきたいという浅はかな狙いがみえみえだったのであります。さらに又滑稽なことには、テント運搬のために派遣した56名の自衛隊員は、けん銃14丁を装備していたとのことでありますが、この点についても石破長官の説明によれば、安全な航路を飛ぶ政府専用機の中ですら、「自衛隊員たちは自らの身を守るためにけん銃を持つことが必要であった」という奇妙な答弁もしているのであります。こんなばかな話があるでしょうか。

一方、世間の関心が自衛隊の海外派遣に集まっている中でこの機に乗じて、石破長官率いる防衛庁及び防衛施設庁は、十分な情報公開もせずに、又現場の意見も無視して国民への数々の背信行為を行っていることも事実であります。

そのまず一つは、海上自衛隊が秘かに小型空母を造る計画を進めているということであります。具体的には2001年度から2005年度の中期防衛力整備計画において、現用のヘリコブター登載護衛艦DDH「たちかぜ」「はるかぜ」2艦の更新が計画されています。新造艦は、04年度および05年度に発注されるものと推定されていますが、基準排水量1万3千500トンであります。この大きさは、太平洋戦争時の常識でいえば、重巡洋艦に相当するものであり、それを護衛艦と呼ぶことはいささか無理があり、現在のイギリス空母とほぼ同じ大きさの重巡洋艦になるのであります。

 さらに又その計画図を見ると、まさに空母なのであります。広い平面の甲板の右に小さな艦橋などを置いていますが、海上自衛隊は、このような形がヘリコプターの使い回しに便利、といっていますが、このような艦形は、直ちにイギリス軍と米海兵隊が使用している戦闘機ハリアーや、現在アメリカ軍が開発しているロッキード・マーチン社のF35といった「短距離離陸垂直着陸」(V/STOL)戦闘機が使用できるようにするための対応そのものと、専門家は指摘をしているのであります。従ってこの新造艦計画を見るだけでも、長官は国民に嘘をつき、事実を隠蔽していることとなり、辞任に値すると考えるのであります。

次に防衛施設庁は、沖縄の東海岸辺野古沖のリーフ(環礁)を埋め立て、普天間基地に代わる米軍のヘリポートを建設するための現地技術調査を4月8日から開始しています。しかしこの調査は、地元への十分な説明もないまま、抜き打ち的に行われ、名護市議会は全会一致で抗議の意見書を採択しています。手続が不十分なだけでなく、その調査の中身たるや、事実上建設工事とも言える護岸建設の着手が含まれており、国際的にも希少な海生哺乳類である「北限のジュゴン」の追い出しとも言える暴挙を行っているのであります。

まだ環境省がジュゴンと藻場の広域調査を行っている最中に、環境アセスの方法書も出されていない段階で、ジュゴンなど海中生物や珊瑚礁への影響が大きい、漁船による音波を使った調査や水中爆発を伴う弾性波による調査を強行しようとしているのであります。自然保護団体が世界各国の海生哺乳類研究者の意見を集めた結論は「この現地技術調査がジュゴンにとって害がないとは、だれにも保証できない」という厳しいものでありまして、このように国内外の自然保護団体からも今猛烈な抗議を受けているのであります。

又、現在行われている「地質調査」のための「潜水調査」の具体的な調査の内容と「計画書」も公表されていず、地元の民意は今だ全く尊重されておりません。まさにこの隠蔽体質、現場無視のこのような姿勢こそが、組織の責任者である石破長官の姿勢そのものなのではないでしょうか。

事の重大性を理解しているのかどうか不明なまま、すりかえ答弁を繰り返し、対米追従に固執する小泉総理と、徴兵制を志向し、戦闘機や戦艦のプラモデル作成に興じ現実と趣味の区別がつかなくなっている、はぐらかしと情報隠しの石破長官。この国民にとって極めて不幸な組み合わせの中で、今やまさに民主主義が脅かされ、自衛隊のイラク派遣が行われようとしてきているのであります。一刻も早くこの不幸な組み合わせを排除するために、石破防衛庁長官は自ら退任するべきであります。

私たち民主党は、戦争による被災や略奪などの被害に今も苦しみ続けるイラク国民に対し、人道上の見地から復興支援活動を進めることを強く求め、国際社会の喫緊の課題として強くこのことを認識しています。しかし、今般の自衛隊派遣が本当にイラク国民の苦しみを和らげ、国民生活の再建に寄与するものなのでありましょうか。自衛隊がイラクに行き、一体何をするのか、この基本的な問題さえ未だに政府はまともな答弁を行っていません。そしてそれどころか、軍服を着た自衛隊が米軍と共にイラクの地に立てば、それはわが国自衛隊、ひいては比較的良好な関係を保ってきた中東におけるわが国の地位そのものまでをも脅かすことになるのではないでしょうか。

私たちは改めて基本的な立場を確認するべきであります。国連中心主義を掲げるわが国は、国連憲章及び日本国憲法の理念である平和主義、国際協調主義を最大限生かし、まずは国際社会が一致協力してイラクの復興を支援できるよう、一日も早く国連及び関係諸国に強力に働きかけ、国連を中心とした枠組みと取り組みを実現させるべきです。そしてイラク国民が嫌悪し、米国自身のためにもならない米国中心の占領統治を速やかに改め、国連及び関係諸国が協力してイラク国民自身による暫定統治機構を早期に立ち上げる必要があります。

そして自衛隊の派遣は、このイラク国民による暫定統治機構の要請を受けてから後に行うべきであり、それこそが国際社会が求め、かつわが国の国民が自信と賞賛をもって送り出すことができる最低の又最善の条件だと思うのであります。

私たちの問責決議案は、イラク及び国際社会に対するメッセージでもあります。それは不戦の誓いを行ってきたわが国が、安易に自衛隊を海外に派遣することなく、常に国際社会と協調した行動をとり、国際社会が求めた時にはじめて自衛隊を平和貢献部隊として派遣する国家であることを証明する手段でもあります。そしてそのために、まず憲法を顧みず自衛隊を戦地に送り、自衛隊員の身体と精神を危機に陥れようとする石破防衛庁長官の責任を厳しく問うことによって、わが国の平和主義、国際協調主義を本議場の皆さんと共に確認をしあおうではありませんか。

高邁なる理想と見識をお持ちの皆さんが本決議案の真意を理解して頂き、賛成して頂けることを切にお願いを申し上げまして、私の賛成討論を終わります。



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