2002年11月13日 母子及び寡婦福祉法等の一部を改正する法律案について本会議質問
155-参-本会議-5号 2002年11月13日(未定稿)
○谷博之君 私は、民主党・新緑風会を代表して、ただいま提出されました母子及び寡婦福祉法等の一部を改正する法律案につきまして、坂口厚生労働大臣並びに関係大臣に質問をいたします。
今般の厳しい経済情勢にあって、一人親家庭や寡婦、そして障害者、難病や慢性疾患に苦しむ人たちの雇用と生活は大変厳しい状況にあります。
私の地元である栃木県宇都宮市で、一昨年の二月八日、生活に困窮した母子家庭で二歳の女の子が飢えて凍え死んだ痛ましい事件が起きましたが、当時二十九歳の母親は、内職で月数万円の収入しかありませんでした。また、今年の九月には、岡山県の倉敷市でも同様に母子家庭の十一歳の少女が餓死する事件がありました。八年前に母子支援施設を出て転々とし、人生に疲れたと事情聴取に述べた母親の養育責任は問われるべきですが、しかし、その母親も衰弱するまでになっていたということで、社会や国はその支援の責任を十分に果たしていたと言えるのでしょうか。
母子家庭の平均的な年収は、平成九年の調査で、手当と養育費を含めてもわずか百九十四万円と、一般世帯の三六%足らずでありました。ところが、生活保護基準以下の年収しかない母子家庭は約半数に達するにもかかわらず、実際に保護を受けているのは八・五%にすぎないということでありました。これは、生活保護の受給要件が厳しいということと同時に、彼女たちの多くが自らの力で生活をしていきたいという意欲を持っていることも同時に示しています。これは大変重要な事実だと私は受け止めております。
今後も離婚の増加が予想されますが、自力で生活したいという意欲を持つ女性たちに就業の機会を提供し、併せて育児面でのサポートを行う、つまりは自立支援を行うことにこそ、母子家庭に対する支援の基本があるのではないかと思うのであります。当事者に自立への意欲をしっかりと持ってもらうために最も大切なことは、支援の在り方について当事者も参加して検討し、策定することだと思います。
そこで、まず坂口厚生労働大臣に伺います。
今回の母子及び寡婦福祉法等の改正案の基になった、本年三月七日に厚生労働省が取りまとめた母子家庭等自立支援対策大綱の策定過程において、当事者たる一人親家庭の親や子供、あるいはパートナーに先立たれた女性の十分な意見は、果たしてどの程度聴取し、反映してきたのでありましょうか。そして、そのことについて坂口大臣はどのようにお考えでありましょうか。私には、どうしてもそれは必ずしも十分ではなかったと思うのであります。
また、栃木県内のある市の職員からは、今般の母子自立支援員の設置や児童扶養手当の改正について、余りにも唐突に国からの連絡が入り、内容も分からないまま来年度予算を立てざるを得なかったとのEメールが届いております。そして、このままでは県により制度の運用が違ってしまうのではないかと危惧すら感じているのであります。つまり、これも支援の直接の当事者である自治体との十分な意見交換がなされないまま今回の法改正が行われようとしている何よりもの証拠ではないでしょうか。
児童扶養手当の削減について、与党三党はそれぞれの母子家庭対策の基本方針において、受給者数が増大するので児童扶養手当は合理化すべしと、まるでコピーをしたかのようにそっくり同じ内容を主張しておられます。つまりは一言で言えば、財政難だから手当の額を削減するのだという話であり、そしてまた、政府の母子家庭等自立支援対策大綱は、この与党三党の方針を踏まえ出されてきているということでありますから、児童扶養手当法改正案第十三条の二は、財政的な面からの予算削減措置に何よりもほかならないのではないでしょうか。
そこで、こうしたことからして支給開始五年後の削減措置は議論が不十分であり、余りにも問題点も多いことからして、直ちに撤回をし、法案から削除すべきであると考えますが、坂口厚生労働大臣の御答弁をいただきたいと思います。
一人親家庭への子育て支援の充実には、保育所の量的な整備、そして病児保育や延長保育等の多様な保育サービスの充実が何よりも不可欠です。昨年五月、小泉総理大臣は、総理就任直後の所信表明演説において、政府を挙げて子育て支援を行うとして待機児童ゼロ作戦を打ち出しました。ところがどうでありましょうか。実態は、昨年四月に二万一千人だった待機児童は、今年四月には二万五千人にも増えてきているのであります。
このように、待機児童が一向に減らない現状で母子家庭の優先入居という施策は都市部で理解を得られるはずはありません。三年後に待機児童をゼロにするという小泉内閣の公約は果たして守れる見込みはあるのでしょうか。来年四月には待機児童数は更に増える可能性は大であります。また、子育て短期支援事業の実施状況が都道府県で大きくばらついているのは、利用希望者が多いにもかかわらず、事業を実際行っていない市町村が反対に多いことの何よりもの証左ではありませんか。
事業開始後八年も経ているのに、いまだに多くの都道府県で実績ゼロというのは行政の怠慢と言わざるを得ません。この点について、坂口厚生労働大臣にお伺いいたします。
離婚や死別によって一人親家庭になってしまうのは男女を問いません。しかし、母子家庭への支援がとりわけ求められているということは、我が国が依然として男女共同参画社会を実現できていないというあかしでもあります。そして、母子家庭を始め、事実婚、単身世帯等、どのようなライフスタイルにも中立、公平な真の男女共同参画社会の実現が強く求められています。そして、そのためには年金や税制の個人単位化や男女雇用機会均等の実現に向け、男女共同参画担当大臣がリーダーシップを発揮して、政府を挙げてこうした問題点に積極的に取り組むべきではないでしょうか。
母子家庭の就労している母親のうち、四五%以上が臨時雇用やパート労働者あるいは日々雇用で占められており、今後ともパート労働者や日々雇用労働者がますます増えていく中で、社会保険や税制において常用雇用者との間で均衡な処遇となるよう、また採用時に年齢や子供の有無によって不当な差別が行われないように早急な取組も必要と考えますが、そこで、こうした点についての福田男女共同参画担当大臣の御所見を伺います。
平成十一年六月に男女共同参画社会基本法が施行されて以来、全国の三十八の都道府県、七十六の市区町村において男女共同参画に関する条例が制定されました。この進捗状況、そしてその内容について、福田大臣はどのような御所見をお持ちでしょうか。
私は、それぞれの自治体において、地域の特性を踏まえつつも、基本的には男女共同参画社会基本法の前文にある、男女が互いにその人権を尊重し合いつつ責任を分かち合い、性別にかかわりなく、その個性と能力を十分に発揮することができる社会の実現を目指していくという理念が何よりも柱に据えられた内容の条例が今後とも策定されていく必要があると考えておりますが、福田大臣の御意見を伺います。
性別にかかわりなくということであれば、母子家庭対策と同様に父子家庭対策も充実させるべきだと考えます。
父子家庭は、平成十年の数字で約十六万三千四百世帯と、九十五万世帯を超える母子家庭と比べて絶対数が少なく見落としされがちな状況にありますが、父子世帯の収入一つを見ても、一般世帯と比べて低いのもまた事実であります。その結果、母子家庭であれ父子家庭であれ、経済的困難の程度が同じなのであれば同様に救済されるべきであり、栃木県鹿沼市では、この八月から父子家庭への児童扶養手当の支給を市の単独事業として全国に先駆けて開始したのであります。
そして、これらのことはほんの一つの事例であり、他にも母子寡婦福祉貸付金制度の適用や就労支援策などが求められており、今こそ母子家庭、父子家庭の両者を含む一人親家庭への支援に関する包括的な法律を整備するなどの必要が強く求められていると思うのであります。そしてまた、相談相手がいないとの回答が四三・二%に上っていることを考えると、父子家庭の団体設立を支援することも必要なのではないでしょうか。坂口大臣は、父子家庭対策について今後どのように施策を展開するつもりか、伺います。
現実の話として、子供の父親から養育費を受け取っている一人親の母親は全体の二割にすぎません。今回の改正案では、母子及び寡婦福祉法の第五条に、子供の父親の養育費支払の責務と、国及び地方公共団体の養育費確保のための環境整備に関する責務等を規定し、今後、養育費のガイドラインを規定していくとのことでありますが、家庭裁判所の調停や裁判で養育費を取り決めても履行が確保できない状況では実効性は全くないと言わざるを得ないのではないでしょうか。
子供の養育費の履行を確保するためには、民法本体に養育費の支払義務を明記する改正こそ必要だと考えます。また、政令を改正して、離婚届出用紙に、養育費や面接交渉の取決めについて記入する欄を設けることも履行確保に効果的なものではないかと考えますが、森山法務大臣の御所見を伺います。
続いて、賃貸住宅の家賃債務保証制度について伺います。
住居は自立生活の基盤であります。政府案では、全国保証株式会社による賃貸債務保証をうたっていますが、別居や離婚直後は経済的に困窮し、要件である一定の収入、つまり月額家賃の二か月分を捻出すること自体が非常に困難であります。高齢者居住法に基づく高齢者居住支援センターによる家賃債務保証という住宅支援策を母子家庭にも準用すべきであると考えますが、扇国土交通大臣の御所見を伺います。
金子勝慶応大学経済学部教授はその近著で、長期停滞の時代には何よりも人々の信用と信頼回復を取り戻すための政策が最優先すべきと述べております。消費デフレから脱却するためにも、一人一人が安心して暮らせる生活のセーフティーネットを整える施策が求められているのであります。
このような観点から、私は、今回の改正案が自立に向けぎりぎりの努力をしている母子家庭や寡婦の方々をいきなりがけから突き落とすようなものであってはいけないと強く危惧をいたしております。手当の削減よりも先に、まずは実効性のある就労支援と育児支援を行うべきことを強く主張いたしまして、私の質問を終わりといたします。(拍手)
〔国務大臣坂口力君登壇、拍手〕
○国務大臣(坂口力君) 谷議員にお答えを申し上げたいと存じます。
母子家庭等自立支援対策大綱の策定過程についてお尋ねがございました。
母子家庭等自立支援対策大綱の策定に当たりましては、担当者が全国各地に赴きまして、全国の母子寡婦福祉団体協議会及び各地の母子寡婦福祉団体の方々と意見交換を重ねてきたところでございます。さらに、NPO法人も含めました各種の母子家庭の団体からも何度もヒアリングを行いまして、当事者である母子家庭の方々の御意見を反映させるように努めてきたところであります。
今後とも、母子家庭施策の推進に当たりましては幅広く御意見を伺ってまいりたいと考えておりますし、先ほど御指摘になりましたように、自治体との連携も密にしていきたいと考えているところでございます。
児童扶養手当の五年後の一部支給削減につきましてのお尋ねがございました。
今回の改正案につきましては、児童扶養手当制度を離婚直後の一定期間に重点的に給付することにより、離婚等による生活の激変を一定期間で緩和するとともに、この間に集中的に就労支援策を講じますとともに、母子家庭の自立を促進する制度に改めるという観点から見直しを行っているところでございます。この見直しによりまして、将来更に増え続けることが予想されます母子家庭に対する給付制度を安定的なものにしたいと考えております。
五年後の減額につきましては、子育て・生活支援策、就労支援策、養育費の確保策、経済的支援策の進展状況及び離婚の状況などを踏まえ決定したいと考えております。また、その際には、NPO法人を含みます母子福祉団体など幅広い関係者からの御意見を十分伺いたいと考えているところでございます。この五年間に、雇用対策など、国が十分な対策を立てる、この責任を負ったというふうに自覚をいたしております。
いわゆる待機児童ゼロ作戦と子育て短期支援事業につきましてのお尋ねがございました。
待機児童ゼロ作戦につきましては、保育所等を活用し、待機児童を解消するために、平成十四年度から年に五万人、そして平成十六年までに十万人、合計で十五万人の受入れ児童の増大を図りまして待機児童の減少を目指す取組であります。
平成十四年四月一日の保育所利用児童数は、前年度に比べまして五万一千人の増となっているところであり、平成十四年度中に五万人の受入れ増につきましても着実に実施しているところでございます。
次に、子育て短期支援事業についてでございますが、母子家庭などが安心して子育てをしながら働くことができる環境を整えるためには、親の病気等の際にショートステイなどを行う本事業を一層普及させるとともに、利用しやすいものとすることが重要でございます。
このため、今回の法律案におきましては、本事業の実施や財政的な支援に関する規定を児童福祉法に設けるとともに、今年度予算におきまして、一人親の低所得世帯に対します利用料免除や補助基準等の見直しなどの措置を講じたところであります。
今後、待機児童ゼロ作戦の計画年度であります平成十六年までの間に、保育需要にこたえるとともに、子育て短期支援事業を始めとする幅広い子育て支援等の充実普及に努めてまいりたいと考えております。
最後になりますが、父子家庭に対する支援についてのお尋ねもございました。
平成十年度の全国母子世帯等実態調査によりますと、母子家庭の平均年収が二百二十九万円であるのに対しまして父子家庭は四百二十二万円と二倍近くになっており、同調査におきましても、最も困っている事項として、家計よりも家事が挙げられております。また、母子家庭は離婚等により家計が激変する場合が多いのに対し、父子家庭におきましてはこのような激変が起こることは少ないのではないかと考えております。
御指摘の父子家庭への支援につきましては、こうした父子家庭の経済状況やニーズを踏まえまして、今回の改正法案におきましても、子育て支援サービスについて父子家庭も対象とすることを明確に位置付けたところでございます。
なお、父子家庭に対します児童扶養手当の支給などの経済的支援や就労支援等、母子家庭を含みます一人親家庭への支援に関する包括的な法律の整備、団体設立の支援などにつきましては、制度の創設経過や母子家庭の実態、一般の低所得世帯との均衡などを考慮しながら、慎重に検討していく必要があると考えているところでございます。
以上、お答えを申し上げました。(拍手)
〔国務大臣福田康夫君登壇、拍手〕
○国務大臣(福田康夫君) 谷議員にお答えします。
まず、ライフスタイルに中立な制度等についてお尋ねがございました。
女性の就業を始めとするライフスタイルの選択に大きなかかわりを持つ制度、慣行の中には現在の状況に適合しないものや女性の就業の妨げや男性の選択を狭めているものなどもあることから、男女共同参画の観点から総合的に検討することが必要であります。
このため、男女共同参画会議では、影響調査専門調査会において、特に影響の大きい税制、社会保障制度、雇用システムについて検討を行い、個人単位化や雇用形態、処遇の見直しなどについての中間報告を四月に取りまとめました。また、この報告に基づき、私から経済財政諮問会議において説明もいたしております。さらに、国民からの意見なども踏まえて議論を深め、本年十二月に社会保障制度を中心とした報告を取りまとめる予定であります。今後とも、男女共同参画会議の検討結果を踏まえ、ライフスタイルに中立な制度の構築に関する関連施策の総合調整を積極的に進めてまいります。
次に、男女共同参画に関する条例についてのお尋ねがございました。
近年、地方公共団体において条例の制定が急速に進展していることは、地域における男女共同参画の推進のために心強いことであると評価しております。今後とも、男女共同参画に関する条例が、御指摘のように、男女共同参画社会基本法の趣旨、理念を踏まえるとともに、各々の地域の特性に応じ、また住民の意向等を勘案しながら制定されることを期待しております。
以上であります。(拍手) 〔国務大臣森山眞弓君登壇、拍手〕
○国務大臣(森山眞弓君) 谷議員にお答え申し上げます。
まず、養育費の支払について民法に規定するべきではないかとのお尋ねがございました。
父母が離婚した場合の子供の養育費につきましては、現行民法の下においても、父母の一方は他方に対し、第七百六十六条第一項が規定する子の監護について必要な事項として、子の養育費の支払を求めることができると解されております。したがいまして、子供の養育費の問題は、現行民法の規定によりましても既に制度的に手当てをされているものと認識しております。
次に、離婚届出用紙等についてのお尋ねがございました。
戸籍届書の様式は戸籍法施行規則により定められておりますが、離婚届出用紙等の戸籍届書は、親族的身分関係を登録して公証するという戸籍の機能にかんがみ、戸籍に記載すべき事項を届け出させるものでございまして、その他の事項を記載させることは戸籍届書の性格になじまないものと考えられます。
また、仮に養育費や面接交渉の取決めを戸籍届書に記載したといたしましても、それには強制執行力がなく、最終的解決には至りませんので、御指摘のような養育費や面接交渉の取決めについて記入する欄を設けることは適当ではないと考えます。
しかし、養育費の支払の確保が重要な問題であるということは法務省といたしましても十分認識をしているところでございまして、現在、養育費の履行確保の方策について鋭意検討を進めているところでございます。(拍手)
〔国務大臣扇千景君登壇、拍手〕
○国務大臣(扇千景君) 谷議員から、母子家庭の居住の安定を図るということで、家賃の債務保証についてのお尋ねがございました。 母子家庭にとりまして居住の安定ということが大変大事なことである、しかも重要な課題であるということは認識しておりますし、また、このために、従来より、母子家庭に対する公営住宅の優先入居制度等を設けているところでございますので、一般入居も含めまして、約九十五万の母子家庭のうち、一七%に相当する約十六万世帯が公営住宅に入居されているのが現在でございます。 また、母子家庭を対象とした家賃の債務保証につきましても、複数の民間業者にこの保証制度で実施されているところでございますので、その保証実績につきましても着実に増加いたしております。これらの制度によって、一層活用されるということを、母子家庭の居住の安定が図れると考えておりますので、見ていきたいと思っております。 また、母子家庭に対する住宅の支援策につきましても、これらの公営住宅における母子家庭の入居状況、それから民間の事業者による家賃の債務保証制度の実施状況等を踏まえて、必要な施策について検討してまいりたいと考えております。(拍手)