民主党ハイタク政策議員懇談会

仙台タクシー事情調査報告

2005年4月8日
民主党ハイタク政策議員懇談会 
会  長 細川律夫
事務局長 谷 博之

1.はじめに
民主党ハイタク政策議員懇談会は、2005年4月1日、衆参5名の議員団によって、仙台におけるタクシー事情の視察を行い、調査に当たった。以下、その概要を報告する。

2.調査団名簿
 衆議院議員 細川律夫 (団長/ハイタク政策議員懇会長)
 参議院議員 谷 博之 (同事務局長)
 衆議院議員 金田誠一  衆議院議員 今野 東  参議院議員 岡崎トミ子

3.事情調査の趣旨
道路運送法の改正に伴い、ハイヤー・タクシーの需給調整規制が撤廃されてから、3年が経過した。このハイタク規制緩和の影響がどう現れているかを実地に検証することが今回の視察の目的である。視察地に仙台を選んだ理由は以下の3点である。

(1)政令指定都市で唯一、道路運送法の特別監視地域に指定され、大阪や札幌に次ぎ著しい供給過剰にあること。
(2)増えすぎたタクシーが渋滞を引き起こしたり、交通事故につながっていると伝えられていること。
(3)タクシー運転者の労働条件も、東北地方の中心である宮城県で年収240万円と劣悪化していること。

4.調査団の行程
16:00-16:30 記者会見
16:30-17:30 宮城県タクシー協会仙台地区総支部と面談
         佐々木昌二 宮城県タクシー協会会長
         藤島博行  宮城県タクシー協会副会長
         千葉幸一  仙台地区総支部経済特区対策特別委員会委員長
17:30-18:00 東北運輸局にて事情聴取及び意見交換
         松本和良  東北運輸局長
         中岫隆男  自動車交通部長
         大泉宏   旅客第二課長
         (岡崎議員はここまで)

21:00-24:00 視察(JR仙台駅前、広瀬通、国分町通、定禅寺通)                       
         (細川、谷、金田、今野議員)

5.主な内容
(1)記者会見
冒頭、細川会長より議懇の趣旨について説明し、その後谷事務局長から今回の視察の理由や目的などの説明を行った。記者からは具体的な視察場所などにつき質問が出た。

(2)宮城県タクシー協会仙台地区総支部佐々木会長より「仙台は昨年9月に特別監視地域に指定されたこと、規制緩和以降、750台もタクシーが増えたこと、供給過剰は明白で減車が必要だが、自助努力では限界があり、行政指導が不可欠である。」との意見と要望があった。また今年2月に国交省が「仙台圏におけるタクシー問題対策協議会」を設置するきかっけになった宮城県タクシー協会の「タクシー需給調整特区」提案について経緯の説明があり、民主党の櫻井充参議院議員が全面的にバックアップしてなされたものとのことだった。特区提案に対しては2月9日に政府から最終回答があり却下されたものの、「法の見直しの是非を含め、検討していく」との見解が初めて示されたことを評価しているとのことだった。
議員団より、経営状況や業界内での規制等について質問があり、佐々木会長から「東京は特別で地方都市の大半は赤字、郡部の零細業者は廃業を迫られているが、一部の大手だけは全国展開のスケールメリットで黒字を出していること、また業界内の規制は公正取引委員会にひっかかるのでできない、運転者の定着率が低く毎年約千名の出入りがあり、地理の知識など質が大変落ちていること」などの回答があった。

(3)東北運輸局
松本局長より「東北運輸局管内におけるタクシー事業の概況」について説明があった。宮城県全体で965の事業者がおり、車両数は5,236台。タクシー輸送人員は昭和53年と比べ半分以下に落ち込んでいるが、営業収入はなんとか昭和53年当時のレベルを維持しているとのことだった。また、3月4日に第1回の仙台圏におけるタクシー問題対策協議会が開催され、問題点の抽出が行われ、次回は4月18日、8月をメドに問題解決に向けた自主的な取り組みについて結論を出したいとのことだった。

議員団から供給過剰と低給与の実態についての見解を求められたのに対し、局長以下、だれも正面からの回答はできなかったが、「地理知らない人は確かに増えているが、運転者の質が落ちたとは思わないこと、新規参入には中小企業が多いこと、利用者にとっては3年前と比べタクシーをつかまえる苦労がなくなったこと、仙台圏は営業成績からすれば管内でベストであり、求職者も絶えないこと」などの回答があった。タクシー台数が3割増えたことに比例して、交通事故が増加しているかどうかについては、後日資料を送るとの回答を得た。また今野議員から「座長は自動車交通部長ではなく、民間有識者にゆだねるべき」との意見があった。

(4)街頭視察
まずJR仙台駅西口に行き、駅前タクシープールに小型車を中心に客待ちのタクシーが約80台、あふれている実情を視察した。お客の行列は全くなく、1人のお客を乗せるのに、タクシーは最低1時間待つ。規制緩和前には長くて40分、新幹線が停まれば全部のタクシーがはけた。お客が並んでいた。
続いてタクシーに分乗して広瀬通で降り、数ブロック先の国分町通まで歩いた。広瀬通(片側3車線)では2車線をタクシーが占領しており、外側の車線では客待ちの為一時停止しているタクシーに対し、数名の警察官が停まらないよう交通整理していた。片側1車線しかない繁華街の国分町通は、両方向ともタクシーと運転代行車で大混雑しており、立体駐車場から出てくる一般車両が苦労していた。

国分町通のもう一方の出口である定禅寺通では、交差点でさえ一時停止している客待ちのタクシーがいて、道を横断する歩行者の妨げとなっていた。

この日は金曜日であり、また東北楽天イーグルスの地元初戦にあたりそちらにタクシーが出ているため、普段より混雑していないとのことだったが、客待ちのタクシーがあふれていることを十分実感できた。

6.調査の結果
(1)仙台の実状
街頭視察の結果、調査前の認識のとおり、少なくとも仙台市内においては、完全に供給過剰の状態であることが明確となった。それが交通渋滞を引き起こし、他の車両はもとより通行人にも多大な迷惑を及ぼしていることは間違いのない現実である。

一方、宮城県タクシー協会仙台地区総支部及び東北運輸局との面談においては、データの面からも特に仙台における増車とそれに反比例する日車営業収入の低下、その結果としての運転者給与の低下、と同時に事故の増加等が明らかになった。規制緩和後現在に至るまでの経過は、経営サイド、運転者の側から見る限り最悪に近い状況が続いていると言えるだろう。他方、利用者の側から見ると、いつでも利用できるという利便性の増進、一部での運賃・料金の低下等、歓迎すべき点もあろうが、事故の増加による安全性阻害、渋滞による経済損失と迷惑、運転者の質的低下による地理不案内などマイナス要因も多く、決して利便性、安全性を総合的に勘案してプラスであるという結論にはならない。

約2年前、この議員懇で大阪の事情を調査した際、規制緩和後1年余が経過した時点で、増車による客待ち、それに付随する違法行為、20以上にも及ぶ運賃・料金種類による混乱とそれに伴う需要が起こっていない現実が見られた。それから2年弱が経過した現在、大阪ではさらに運賃・料金多様化による混乱が続き、「運賃・料金の大阪、増車の仙台」と並び称される仙台においても、全く先が見えない状況が続いている。

こうした点を見る限り、3年前の規制緩和は現在のところ失敗だったと総括せざるを得ない。

(2)規制緩和に関する考察
それでは、規制緩和の目的と現状はどうしてこれほどまでに乖離したのか。第1に、以前から言われたとおり、市場原理が働きにくい業界の独自性があげられる。ほとんどが歩合給のため、事業者側に増車によるディメリットが少なく、総収入を増加させるための増車に歯止めがかからない。第2に、運転者の労働市場についても、折からの正規雇用減で労働市場への参入は多く、それが増車を支えているため、ここでも市場原理は作用しない。非熟練運転者が参入する一方、給与が減少するため熟練運転者は他の業種へ転出することになり、運転者の水準は低下する。それとあいまって日車営収の減少は運転者をより過度な労働へと駆り立てるため事故の発生に結びつく。第3に、年収が250万円を下回る状況では雇用関係はますます歪み、年金との併用するもの、あるいはパート労働が増加し、その点でも世界でも良質であると言われた運転者の地位を押し下げている。第4に、運賃・料金の多様化は乗客の利便に直接はねかえらない。一部の大口顧客等を除き、多くの乗客に車の選択権は乏しいため、運賃・料金の多様化が需要増に結びついていない。いずれにせよ、市場が適切な台数、運賃・料金を生み出すとの予定調和論はすでに破綻していると言ってよい。

(3)問題解決のために
それでは、どうしたら問題の解決が図られるのか。まず、現行制度を前提にした場合、次の2点を指摘したい。
第1は不良事業者、運転者の排除である。経済規制の緩和とともに、事後チェックによる社会的規制の強化が謳われたところであるが、悪質な事業者、運転者に対する制裁等の制度が十分機能しているかどうか、問題が残る。監査をさらに厳格に行う体制の強化が望まれる。

第2は緊急調整地域、特別監視地域と指定とその運用である。現在、緊急調整地域は沖縄のみであり、ここも改善は一向に図られていない。これだけ増車による矛盾が拡大するのであれば、地域の指定を運用面で弾力化し、実効性ある施策を行うようにすべきであると考える。その前提として、需給の実態を的確に示す指標も考案すべきである。

上記2点など、現行制度の枠内での改善に限界がある、あるいはそれすらも可能性に乏しいということであれば、道路運送法の改正を視野に入れ、検討をしなければならない。需給調整撤廃を再考し、新たな調整機能を立案することが必要になる可能性も大きい。しかし、その際は単なる規制強化という先祖返りではなく、利用者の利便性、安全性を最重点におきつつ、地域の特性を生かした枠組みのなかで新しい需給調整の仕組みを考えることが重要である。

7.今後の取り組みなど
ハイタク政策議員懇談会としては、上記の認識のもと、今後とも規制緩和後のタクシーの実態について調査を行うとともに、具体的な施策や法の運用面等で政府、国交省に対し要請を続けてまいりたい。と同時に、道路運送法改正に関してもその可能性や方向性等について検討していきたい。
最後に、今回の調査について手配等にご尽力いただいた全自交労連本部並びに全自交宮城地方本部の方々に対し、この場をお借りして心から感謝申し上げる。

以上